Hypomyces armeniacus Tul., Ann. Sci. Nat. Bot., Ser. IV, 13: 12, 1860.

Anamorph:
Cladobotryum verticillatum (Link) Hughes, Can. J. Bot. 36: 750, 1958.

Hypomyces armeniacus Fig 1-2.

Hypomyces armeniacus Tul., Ann. Sci. Nat. Bot., Ser. IV, 13: 12, 1860.

Anamorph:

Cladobotryum verticillatum (Link) Hughes, Can. J. Bot. 36: 750, 1958.

寄主上の性質(テレオモルフ):寄主上の子実体形成菌糸層(subiculum)は淡赤色(No.44 coral),寄主全面をおおう;子実体形成菌糸層を構成する菌糸は幅(4-)6-11 mm,柔軟組織状,隔壁を有し厚壁,3% KOH 水溶液で変色しない.子嚢殻はアンズ色(No.47 apricot),卵形から長卵形,(251-)284-324(-365) × 243-259(-365) μm,子実体形成菌糸層に半ば埋没して群生;子嚢殻基部は円錐状,122-138(-170) × (122-)138-162(-203) μm;子嚢殻は頸部先端が平坦,上部に孔口を生じ,(49.0-)65.0-81.0(-97.0) × 20.0-40.0μm,3% KOH水溶液で変色しない;子嚢殻壁は6.0-14.0(-24.0) × 4.0-12.0(-24.0) μmの楕円形細胞からなる数層より構成され,厚さ16.0-28.0μm;頸部壁面は4.0-7.0 × 2.5-6.0μmの長楕円形細胞から構成され,内部に周毛を有する.子嚢は円筒状,(148-)208-216(-232) × (2.0-)2.0-2.5(-3.0)μm,8胞子性,長さ12.0-88.0μmの柄を有し,先端構造はやや厚壁,長さ4.0-8.0μmの孔口を生じる.子嚢胞子は無色,紡錘形から長紡錘形,中央に隔壁を有する2細胞性,(24.0-)34.0-36.0(-40.0) × (5.5-)6.5-7.0(-8.5) μm,表面に直径0.5-1.5μmの疣状突起を有し,両端は突状で,長さ2.0-4.5(-5.5) mm,先端は丸みを帯びるが,まれに鋭角となる.子嚢胞子は発芽時に側面表層部がわずかに膨張し,その一端から菌糸を生じる.

培養性質(アナモルフ):麦芽寒天培地上20℃での生育は速く,綿毛状,表面の色調は白色(No.7 white),コロニーは表面から高さ9 mmに達し,周縁はゆるやかな波状,カビ臭を有し,裏面の色調は無色から淡褐色(No.30 clay pink, No.32 clay buff);コーンミール寒天培地上のコロニーの生育は麦芽寒天培地と同様,菌糸層はやや密生,基菌糸層に厚壁胞子を多数形成する;25℃,30℃では分生子形成が著しく低下し,37℃では発育が認められない.また,20〜30℃,4週間培養では,子嚢殻の形成は認められない.菌糸は無色,幅(2.0-)4.0-6.0(-10.0) μm,隔壁を有し,薄壁.分生子柄は気菌糸上に形成されるが菌糸との区別は不明瞭(semi-macronematous),有隔壁,やや厚壁で不規則に2-3回分枝し,幅(4.0-)6.0-11.0μm,先端に分生子形成細胞を生じる.分生子形成細胞は分生子柄側面または先端に単生または3-4個輪生し,無色,48.0-52.0(-100) × (3.5-)4.0-4.5(-6.0) μm,キリ形,先端は幅(0.5-)1.5-2.0(-4.0) μmで緩やかに狭くなる.分生子は単生または2個まで対になる;無色, 無隔壁,亜球形から広楕円形,薄壁で平滑,(10.0-)14.0-16.0(-22.0) × (7.5-)8.0-10.0(-12.0) μm.厚壁胞子は基菌糸に側生,またはその分枝の先端に連鎖状に形成される,淡褐色(No.10 buff),やや粗面,亜球形,直径(12.0-)22.0-24.0(-36.0) μm.

供試標本:カラマツ枯枝上,群馬県沼田市湯の小屋温泉,1999年10月16日,布村公一氏採集(標本:KPM-NC0006515,菌株:KS99135 = JCM 10757 = TAMA16);カヤタケ属菌(Clitocybe sp.)子実体上(アナモルフのみ),東京都武蔵村山市東大和公園,1999年8月31日,井口潔氏採集,(標本:KPM-NC0006516,菌株:KS99074 = JCM 10754  =  TAMA17); チチタケ属菌(Lactarius sp.)子実体上(アナモルフのみ),山梨県塩山市柳沢峠,1999年9月12日,常盤俊之採集(標本:KPM-NC0006517,菌株:KS99095 = JCM 10755 = TAMA18)

本種のアナモルフは,夏季から初秋に,腐敗した各種のハラタケ類子実体表面に普通に発生し,寄主の表層部全面を綿毛状の菌糸で覆い,分生子を豊富に形成していた.しかしテレオモルフを伴う標本は盛秋のわずかな期間しか採集できなかった.著者が採集したテレオモルフは全て枯枝,幹の樹皮,カラマツの葉面,コナラ属果実(壑果)等に発生したもので,担子菌子実体上のものはなかった.今回採集したテレオモルフは,アナモルフが発生したハラタケ類子実体の腐敗が進み,完全に消失した後,地表部の植物遺体上に発生したものと推定している.

参考文献 (References)
常盤俊之・奥田徹.2001.日本産菌寄生性子嚢菌Hypomyces属菌3種について.日菌報 42: 199-209.

Tokiwa T, Okuda T (2001) Japanese fungicolous ascomycetes, three Hypomyces species.  Nippon Kingakukai Kaiho 42: 199-209 (in Japanese)


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