Hypomyces hyalinus (Schw.: Fr.) Tul., Ann. Sci. Nat. Bot., Ser. IV, 13: 11, 1860.

Hypomyces hyalinus Fig. 1-2


Hypomyces hyalinus (Schw.: Fr.) Tul., Ann. Sci. Nat. Bot., Ser. IV, 13: 11, 1860.

寄主上の性質(テレオモルフ):寄主上の子実体形成菌糸層は茶褐色(No. 15 brick)から黄褐色(No.28 milky coffee)または肉桂色(No.10 cinnamon),寄主全面を覆う;子実体形成菌糸層を構成する菌糸は幅5-9.0(-10.0) μm,偽柔組織状,隔壁を有し厚壁で密に絡みあう,3% KOH水溶液で変色しない.子嚢殻は明褐色(No.47 apricot),卵球形から卵楕円形,(200-)220-240(-280) × (210-)220-260(-270) μm,子実体形成菌糸層に埋没またはなかば埋没して生じ,群生する,多くは3% KOH水溶液で変色しないが,まれに黄褐色(No.12 fulvous)に変色する;子嚢殻基部は円筒形,(50.0-)60.0-70.0(-90.0) × 120-140(-160) μm;子嚢殻の頸部先端は幅(60.0-)70.0-80.0(-100) μm,平坦,上部に孔口を生じる;子嚢殻壁は数層の,9.0-25.0 × 7.0-15.0μmの楕円細胞から構成され,厚さ18.0-30.0 μm;頸部壁面は6.5-17.5 × 5.0-10.0μmの楕円細胞から構成され,厚さ25.0-38.0μm,内部に周毛を形成する.子嚢は円筒形,(120-)185-195(-200) × 5.0-7.5(-9.5) μm,8胞子性,子嚢柄の長さは15.0-20.0(-32.5) μm,先端構造は厚壁で孔口を生じ,その長さ7.0-11.5μm.子嚢胞子は無色,紡錘形からボート形,基部付近に隔壁を生じ2細胞,ときに内部に油滴を生じる,(19.0-)22.0-25.0(-27.0) × (5.5-)6.5-7.0(-8.0) μm,表面は疣状,両端は長さ1.0-5.0μmの突起を有し鈍微突状;本菌の子嚢胞子は試験した限りでは発芽しない.

供試標本:テングタケ属菌(Amanita sp.)子実体上,長野県下高井郡野沢温泉村,1999年9月20日, 安達ゆり子氏採集,(標本:KPM-NC0006520);群馬県沼田市湯の小屋温泉,1999年9月23日, 布村公一氏採集,(標本:KPM-NC0006521);福島県南会津郡南郷村,1999年9月26日,安達ゆり子氏採集,(標本:KPM-NC0006522).

Hypomyces hyalinusは,もっぱらテングタケ属子実体を寄主とし,子嚢胞子の基部付近に隔壁を有することが特徴である.本菌に侵された寄主子実体は,カサが開かず柄も表面が鱗片状に発達しながら伸長する.本菌が子嚢殻を形成した寄主子実体は奇形化するため,寄主の同定は極めて困難である.しかし未熟な子嚢殻が観察された寄主は全てテングタケ属子実体であった.なお,一般に本菌に侵された子実体全体は“タケリタケ”と呼ばれ,図鑑にも収録されている.

参考文献 (References)
常盤俊之・奥田徹.2001.日本産菌寄生性子嚢菌Hypomyces属菌3種について.日菌報 42: 199-209.

Tokiwa T, Okuda T (2001) Japanese fungicolous ascomycetes, three Hypomyces species.  Nippon Kingakukai Kaiho 42: 199-209 (in Japanese)


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